灼熱の白夜よりも熱い恋をきみと

……あれは妄想なんかじゃなかったんだ。

「あなたを抱っこしていたのを見たときは驚いたわ。あなたが家を出て行ってからこの家に来て、出かけたって話したら追いかけたみたいなのよ。ほんとうに運が良かったのね、あとでお礼をしに行かなくちゃ」

 母が安堵の表情でそういうのとは対照的に、父は厳しい返事をする。

「いや、放っておけ。世界が終わるのなら聖者だって犯罪者になるんだ。他人とは関わらないほうがいいぞ。現に地球の裏側のとある国はそれで滅んだんだろ?」

「あなた、いいじゃない。命の恩人なんですから」

 母が優しい声と笑顔で苛立つ父をなだめる。

「お父さん、お母さん、ごめんなさい……。今度から気をつけます」

「これからひとりでの外出は学校へ行く時だけだ。それも終わったらすぐに帰ってくるんだぞ」

「はい、わかりました……」

「まあまあ、お父さん。あっ、そうだわ、あの男の子があかねに、って手紙を置いていったのよ」

 母は小さくはにかんでエプロンのポケットから一通の封筒を取り出す。洒落っけのない茶色い封筒。