するとそのとき、ピロリロリンと場にそぐわない軽快な音楽が枕元で鳴った。

 携帯電話を取り上げて画面を見てみると、その発信源は文香だった。文香とはしばらく連絡をしていなかったなと思い出す。

……東照寺くんとは上手くいってるのかな? たった数日前だっていうのに、イベントでしおんくんに告白されたのがすごく昔のように感じる。あれから学校にも行ってなかったし、とんでもなく浮世離れしていた感じ。

 ピッと電話を受けるとすぐさま、文香の捲し立てる声が耳に響いた。
 
「あっ、あかね……大丈夫だった? ひどいことされなかった? ごめんね、あたしがイベントを企画したせいであんな変人にあかねが脅迫されることになっちゃって。
 ほんとうにごめん、許してなんて言えないよね……」

 文香の鼻をすする音が受話器の向こうから聞こえてくる。

「違うんだってば、ほんとうは……」

 ほんとうはしおんくんはそんな人じゃないんだって言いたかったけれど、まだあかねは自分が考えた作戦を誰にも明かすわけにはいかなかった。