しおんの家の呼び鈴が鳴ると同時に玄関の扉は開いてしおんが姿を見せた。はぁはぁと肩で息をするあかねを見て驚いた表情のしおん。

「しおんくん、ごめんね、こんな時間に」

「いったいどうしたんだ、あかね」

　しおんがひとこと、発するとあかねはしおんの胸に飛び込み、整理できてない頭を無理やり回転させて言葉を紡ぎだす。

「しおんくん、あたしはみんながしおんくんのことを悪く言っても、あたしだけはしおんくんのことを大切に思ってる。
　なんにも取り柄のないあたしのことを好きになってくれたしおんくんと一緒にいることがあたしのたったひとつのプライドなんだよ。
　それなのにどうしてしおんくんはみんなに悪くいわれるの？」

　あかねは悲痛な面持ちでしおんにわだかまった気持ちをぶつける。すると胸の中で震えるあかねの頭をしおんの掌がそっと撫でる。しおんは言葉を選びながらあかねにいう。

「ごめん、きみを苦しめてしまって。でもこれから俺が話す事情を聞いてほしいんだ。俺は人から嫌われて当然なんだ」

「嫌われて……当然？」