1輪の花がありました

たんぽぽと呼ばれる1輪の花がありました

たんぽぽには憧れがありました

そのあたたかさで世界を照らす存在

太陽の存在

たんぽぽは世界から疎まれて生きてきました

綺麗な花を咲かせる花たちからは雑草と呼ばれ

どこでも深い根を張り生きる雑草と

悲しかった

ただ生きているだけで疎まれることに

辛かった

何かをしたわけでもなくただただ必死に生きようとしているだけなのに

たんぽぽは1人でひっそりと泣いていました

周りから見えないようにみんなが寝静まる夜の世界にひっそりと


太陽のようにみんなから愛される存在になりたい

綺麗になりたいとは思わない

どこにでも根を張って生きていたいとも思わない

けれどもみんなから愛される花でありたいと・・・



ある時、太陽が言いました

ぼくのようになりたいか

ぼくのように生きたってけっして良いものではないしすべてを失うかもしれないよと

たんぽぽは太陽に向かって言いました

貴方のようになれるのでしたら他になにもいらないと

すべてを失ってもいいから貴方のようになりたいと


それを聞いた太陽は言いました

君に特別な魔法をかけたから

君はあと数日でぼくのようになれるよと

その魔法でどうか幸せな世界を生きられますようにと



数日後たんぽぽは綺麗な黄色の花を咲かせました

それは太陽のような綺麗な花を咲かせる魔法でした

綺麗な花を咲かせる花たちにもけっして劣ることのない大きな花でした


綺麗な花を咲かせたたんぽぽは綺麗な自分を自慢したくてしかたありませんでした

これでもう雑草と呼ばれない

綺麗であるなら誰かも疎まれないと


しかし世界は残酷でした

花たちはいくら綺麗な花を咲かせても雑草には変わりないとののしり

雑草たちからも雑草なのに綺麗な花を咲かせるやつと仲間はずれ

そしてたんぽぽは嫉妬という言葉を知りました


たんぽぽはまた泣きました

夜に1人でひっそりと

泣いているたんぽぽに声をかけるものがあらわれました

君は何で泣いているの?

その声にふりかえるけれどそこには何もありませんでした

そっちじゃない、上だよ、ぼくは上にいるよ

上を見上げるとあるのは月だけでした

でも声はたしかに上から聞こえてきました

そうぼくは月だよ

君は何で泣いていたんだい?


たんぽぽは月に言いました

ずっと疎まれていて

やっと綺麗な花を咲かせたのに

嫉妬されてそれが悲しくて

ないものや過ぎたことを願ったことへの罰なのでしょうかと


それを聞いて月は言いました

それはぼくにはわからない

でもね、この世界には罰や罪はなく

あるのは他の人からの賛美と嫉妬だけ

願うことが悪いことだなんてぼくは思わない

その願いが叶うかはわからないけれど

生きとし生けるものは平等に願う権利をもっている

ぼくだって願ったことはあった

ぼくはずっと孤独だったから

ぼくはみんなが眠る世界を照らす存在だから

話相手がほしくてね

みんなが眠る姿を見守るだけの存在だったから


たんぽぽは語りかけました

今は違うのですか、と

ぼくは今もみんなが眠る姿を見守る存在だけれど

ぼくにも友達が出来たから

孤独なぼくにも友達と呼べる存在が出来たから

何かを願うことは罪じゃない

どんなに高望みと言われた願いでも叶う可能性はゼロじゃない

信じていれば叶う願いもあるんだよ


君は何を願うのかな



そうしてたんぽぽが願ったこと

それはお月様のようになりたいと

夜があるから生き物は眠る

眠る世界がなければ生き物は生きられない

誰の目に触れることもない世界で1人

世界を照らし続けるお月様のように

そんな世界を照らすお月様のようになりたい、と


真っ白な姿

お月様のようにひっそりと咲く花であること

白い綿毛を飛ばしてたくさんのお友達を作ること

1人じゃない

たくさんの友達に囲まれて

ひっそりと咲く花

それが願い

そうしてたんぽぽの願いは叶いました

月の様に真っ白な花を咲かせ

周りにたくさんの友達が出来て

たんぽぽは幸せにすごしましたとさ