放課後、帰ろうとした俺の元にクラスメイトがやってきた。

こいつとは、時々会話を交わすくらいであまり親しくない。



「なあ、山瀬」



「ん?」



「ここわからんけん、教えてくれん?」



「あ、いいよ。ここは公式を使って……」



順を追って説明していく。


俺以外のやつらの悩みなんて勉強くらいか…?



「あ、わかったわ。これをここに代入すればいいんやろ?」



「そう…正解」



この…高橋ってやつ飲み込みが早いな。



「助かったぜ、山瀬。ここできんかったら親に殺されるんよ。お前は命の恩人や!」



「それは言い過ぎ」



と苦笑いで返す。



「お前んち、これだけでそんなに言われるなんて厳しいんだな」



と、他人事情に耳を傾ける。



「いや、勉強だけは厳しんだよな」



苦虫をかみつぶしたような表情をして言った。



「俺、スポーツの強豪校に行きたいん。あの、サッカーが強いところ」



「あぁ、うん」



あそこか……と、相槌を打つ。


最近、全国大会で順位入りして有名になってたな。



「やけど親は勉強を俺に求めて、進路の話なんて俺が口を挟む間もなかった」



「…っ……」



俺と……似ている。


何も知らず、吞気に他人と自分を区別していた自分を殴りたくなった。



「理不尽よな」



色んな感情が入り混じった複雑な顔をして、窓の外を見てたそがれていた。