「勉強しなさい」



「…今するとこだった」



「そう言っていつも遊んでるじゃない。いい加減勉強しないと高丘高校行けないわよ」



高丘高校って頭いいところじゃん……。


大人は嫌い。



「……わかってるから」



どこからか湧き上がってくる怒りを必死に抑え、母に背を向けた。



「まったく、うちの子は良い高校に行けるのかしら…」と、去り際に聞こえた一言に苛立ちを覚えた。



どうせ、近所で良い高校に行ってるからって鼻にかけるんだろ。

勝手に俺の進路を決めて……。


大人のすることなんてわかりきってる。

自分のしたいことじゃなくても自慢して、誰かの人生を乗っ取る。

まるで俺は母の操り人形。

自分の人生なんて想像できない。これは俺の人生じゃない。


父は「好きにしなさい」と言ってくれているが、面倒くさいだけなのか、と自然に神経質になってしまう。


中学生になって環境が変わったからなのか、大人の視線がずっと突き刺さってくる。


苛つくこともあれば、嫌になってくることもある。

でも我慢しなければならない。


……反抗すらすることができない。


人の人生決めて他人と俺を比べるのに、他人は他人、あんたはあんたと都合良く言う。

何にもできるからもう大人だろうって、周りから距離を置かれる。見放される。

勝手に期待をしておいて、失望したような顔をする。


できるはずのない期待をされて、とてつもなく泣きたいような辛さが駆け巡る。


そんな大人たちには、牙を剝くことすら許されない。


生きることに苦痛を感じる。


人の過剰な勝手で誰かをこんなにも苦しめる。


これが人間に対する態度なのなのかとも思うし、何もかも嫌いになりそう。


そこまで追い詰められても泣けない。

涙なんて、もう…流れない。


それっておかしいのかなとか、周りのみんなが羨ましく思うようになる。



みんな笑顔でいれて、友達もいて……。

悩みなんてあったとしても小さいだろうって決めつけた。