「あのね、ゆうごはんはカレーをつくるんだよ」
「へー」
「ごはんをたべたらはなびをするの」
「ふーん、いいなあ」

朝食を食べながら今日の予定を話す登生に、淳之介さんは相槌を打っている。

今日、登生の保育園では『お泊り保育』が行われる。
いつもなら夕方には帰る子供たちを保育園に泊めて、料理をしたり花火やゲームをしたりして楽しませてくれて、次の日の夕方まで預かってくれるイベント。
普段子供につきっきりの保護者からするとうれしい催しだけれど、まだ3歳の登生を一晩預けるのには不安もある。

「寝る前には必ずトイレに行くのよ」
「うん」
「寂しくなっても『りこちゃーん』なんて泣かないのよ」
「うん」
「朝起きたら顔を洗って歯磨きをして」
「わかってる」
ムスッとした顔の登生。

「ごめん」
つい心配で言い過ぎちゃった。

登生は今日のお泊り保育をとっても楽しみにしていた。
みんなでつくるカレーも、園庭でする花火も、きっと楽しいだろう。
どちらかと言うと、送り出す私の方が少し寂しい。

「だいじょうぶだよ。あしたはかえってくるからね」
「ええ、待ってる」

少しずつ成長する登生を、きっと姉も見たかったことだろう。
そう思うと、また涙がにじんできた。