「荒屋と会うなら先に言えよ」
いつもよりも乱暴に聞こえる淳之介さんの言葉。

それがワインのせいなのか、私の態度がそうさせたのかはわからない。

「私はただ姉の様子を聞きたかっただけで・・・」

相手が荒屋さんだから会ったわけではなく、お姉ちゃんの友人が荒屋さんだっただけ。そこに深い意図はない。

「言ってくれれば、俺も一緒に行ったのに」
「はあ?」

一緒に行って、何て言うつもりだろうか?
心配でついてきたっていえば、同居までバレてしまうのに、そんなことできる訳ない。

「楽しかった?」
「だから、私たちはそういう目的で会ったわけではなくて、純粋に姉の消息が知りたかったの」
「でも楽しかったんだろ?」

イラッ。
「ええ、料理もおいしくて、お店の雰囲気もすてきでした」
強い口調で、言い返してしまった。

「俺は登生と2人で買ってきた弁当だったのに」
「それは・・・」

その後もブツブツと文句を言い続ける淳之介さんは、一人でワインのボトルをほぼ空けてしまった。