「で、猫に引っかかれたって?」
「ええ」

他に理由が思い浮かばず、苦しい言い訳。
こんなことで淳之介さんが騙されるとは思わないけれど、「ちょっと来なさい」と書斎に呼ばれ、向かい合って座ってしまえば誤魔化すしかない。

「俺に隠し事、してない?」
「してません」
ブルブルと頭を振って見せた。

「もし嘘だったら、」
「だったら?」
なんだか怖いけれど、その先が気になる。

「お・し・お・き」
「はぁ?」
反射的に、耳まで赤くなった。

「登生の前で、1時間の説教だな」
「えぇー、それは」
ちょっときついな。

「嘘じゃないんだろ?」
「そうだけれど・・・」
「じゃあ問題ない」

うっ。
淳之介さんはきっと気が付いているんだ。
荒屋さんかマスターに聞いて知っているに違いない。
それでも、今ここで、私から話すことはできない。
そんなことして麗華が首になったらかわいそうだもの。

「じゃあ、せいぜい猫と仲良くなるんだな」
「・・・」

淳之介さんって本当に意地悪だ。