「おはよう」
「お、はようございます」

まさか、起きているとは思わなかった。
てっきりまだ眠っているものとばかり・・・

「朝食、注文するけれど?」
何がいいかとメニューを差し出される。

えっと・・・
これはどこかのホテルのモーニングかしら。
すごくきれいでおしゃれで、高そう。

「私は結構ですので」
中野さんだけどうぞと言ったつもりなのに、
「じゃあ僕が勝手に決めるよ」
そう言ってスマホを取り出している。

「ちょ、ちょっと待ってください」
このままじゃとんでもない朝食が届きそうで慌てた。

綺麗な顔をして、一見すごく優しそうなのに、時々押しが強くなる。
それが人の上に立つ者の持つ威圧感みたいなものかもしれない。
なんだかんだと言って、この人はお金持ち。私とは住む世界の違う人。
できれば早くここから消えたいのだが・・・

「僕たち大人はともかく、登生くんには食事を食べさせないといけないだろ?」
「ええ」
そんなことわかっている。
でも、だからってこんな高そうなモーニングはありえない。

「わかりました。ご迷惑でなければキッチンを貸してください。私があるもので作ります」
「君が?」
「ええ」

さすがにこれ以上はひけない。
急に泊めてもらって、高級モーニングまでごちそうになる訳にはいかない。