「本当に、カレーでいいの?」
「ああ。その代わり辛いやつな」
「了解」

せっかく食材があるんだから手の込んだ物でも作ろうかと思ったのに、淳之介さんのリクエストはカレーライス。
ただし、いつもの甘口ではなく、辛口にしてくれと注文をもらった。
いつもは登生に合わせて甘口のカレーしか作らないから、淳之介さんの口には合わなかったらしい。

「すごい、お肉も野菜も魚介もぎっしり」
一通りないものはないってくらい食材が詰め込まれている。

うーん、何のカレーにしようかな?
いつもはチキンかひき肉のカレーしか作らないから、たまにはビーフにしてみよう。
冷蔵庫から取り出した牛肉はきれいに霜が入っていてカレーにするのがもったいないようなお肉だけれど、せっかくだから奮発しよう。

「何か手伝おうか?」
「え、いいよ」

今でこそ実家の父も台所に入るけれど、子供の頃は全く何もしない人だった。
だからかな、男の人が台所にいることに違和感を感じてしまう。

「じゃあ、皿でも洗うよ」
「うん、ありがとう」

私が料理を作り、その横でかたずけをしてくれる淳之介さん。
こんな些細な時間がとっても幸せだと思える。