「淳之介さん、どうしてここに?」

「この金は俺が返しておくからな」
男性から投げつけられた1万円札を淳之介さんがポケットにしまう。

「ごめんなさい、迷惑をかけて」
今ここに淳之介さんがいるってことは、きっとパーティーを抜けてきてくれたに違いない。

「田頭麗華にはめられたのか?」
「うん」
最近おとなしかったから、油断していた。

「俺はそんなに頼りにならないか?」
「え?」
「なんであの時、会場で俺のもとに来なかった?」
「それは、」

あんな華やかなパーティーに普段着姿の私がいて、まるで男の人をあさりに来た女のように扱われていて、その私がパーティーの主賓のような淳之介さんに飛び込んでいける訳がない。

「まだ俺のことが信じられないのか?」
「違う」
「じゃあ何だ?」

「あなたの負担になりたくなくて」
「バカ。璃子の一人や二人負担になんてならない。俺を見くびるんじゃない」
「でも」

「俺はあの場で、『私は彼の連れよ』って言ってほしかった。そうしたらどんなことしてでも守ってやった」

私だってそうしたかった。
でも、そんなことしたら大騒ぎになったと思う。