「これは俺じゃない」
「はあ?」

もう、呆れて言葉が出ない。
どこからどう見ても淳之介さんじゃない。

「なあ璃子、信じてくれ」
「無理です」
何をどう信じろっていうのよ。

「ただいま。りこちゃーん」
ちょうどその時、玄関から駆けこんできた登生が私に飛び込んできた。

「登生、お帰り」
言いながら涙が溢れる。

「どうしたの?」
後ろから入って来た綺麗な女性が不思議そうに私を見ている。

きっとこの人がメグさんだ。
待って、この人は淳之介さんとホテルに入って行った女性。
今携帯に写し出されている映像の人。
やっぱりこの人は、淳之介さんの恋人だったんだ。
映像で見るより年上の印象だけれど、確かに美人。

「とにかく、私は実家に帰ります」
これ以上ここにいるのは辛すぎる。

「ダメだ、どこにもいかせない」
「いいえ、淳之介さんが何て言おうと」

「ちょっと、待ちなさい」
いきなり聞こえてきた凛とした声。

見るとメグさんが登生の耳を塞ぎながら、私と淳之介さんを睨んでいる。

「子供の前で喧嘩なんてするんじゃありません。2人とも喧嘩するなら奥へ行って。そして、仲直りするまで出てきてはダメよ」
「「え?」」
あっけにとられているうちにメグさんに背中を押され、私と淳之介さんは普段ゲストルームとして使っている部屋へと入れられてしまった。