「りこちゃん、おなかがいたい」
しょんぼりとした登生が私のエプロンを引っ張っる。

「はいはい、それは困ったわね」

一応相槌は打ったけれど、きっとこれは本当の腹痛ではない。
お友達もたくさんいて保育園を楽しんでいる登生だけれど、人と競い合うことが得意では無いようで、サッカーやドッチボールの接触を伴うようなスポーツを嫌う。
今日は確かサッカー教室の日だから、保育園に行きたくないんだろう。
運動神経はいいんだからもっと喜んでしてくれればと思うのに、本人には苦痛らしい。

「あんまり痛かったら先生に言ってね」

本当は休みなさいと言って欲しいのだろう。
でも、嫌だから休みたいではキリがない。
この先学校に行っても社会に出ても嫌な事はきっとたくさんあるだろうから、向かっていけるような強い子になってほしい。
少なくとも私はそう思っている。

「もう、あるけない」
今日はいつも以上にぐずってしまい玄関を出るときには足が止まった。

「じゃぁ、おんぶしてあげるから行きましょ」

結局、いつも以上の時間をかけて保育園へ送って行った。