「ごめんなさい、私のせいで」
「何で璃子が謝るんだ。璃子や登生と同居したのは俺の意志。それも嫌がる璃子を強引に誘ったんだぞ」
「それは・・・」

初めこそ拒んでいたけれど、今は自分の意志で同居している。
誰かから強要されて続けているわけではない。

「なあ璃子」
「何?」
「今でも璃子は俺のことが嫌いか?」
「私、嫌いなんて言ったこと」
「でも、好きではなかっただろ?」

それは、どうだろう。
『好きだ』と言う気持ちから始まった同居ではなかった。
住む所がなくなって、登生の為にも住む所は必要で、そんな時に『ここにいればいい』と言ってもらったことがうれしかった。
そして何よりも、登生に対して誠実に向き合ってくれる淳之介さんに心動かされた。

「確かにひとめぼれのような恋愛感情があって始まった関係ではなかったけれど、もともと嫌いだったわけではないし、今は好きですよ」
「え?」

絶対に聞こえたはずなのに、聞き返すように首を傾げた淳之介さん。

「私は淳之介さんが好きです」
今度ははっきりと聞こえる声で言った。

すると次の瞬間、

ギシッ。
私の体に押しかかった重み。

目を開けると、すぐ目の前にある淳之介さんの顔。

「俺も、璃子が好きだ」
甘くささやく声で言われ、言い終わらないうちに唇が重なった。