「どういうこと?何で荒屋がこんな時間に電話してくるの?」

淳之介さんに見せるつもりは無かったけれど、隣にいれば嫌でも目に入ってしまったらしい。
さっきから険しい顔をしていた淳之介さんの眉が、もう一段上がっている。

「そんなこと」
知りませんよ。
と言う前に、

プチッ。
淳之介さんが電話を切ってしまった。

「ああー、ちょっと」
いくらなんでも私の電話をかってに切るなんてひどい。

「何?荒屋に用事だった?」
「そう言うわけじゃないけれど・・・」
「じゃあいいでしょ。そもそも何で荒屋が璃子の番号を知っているの?」
「それは、この前食事に行ったときに連絡をとれるようにしようって」

連絡先を交換するくらい珍しいことでもないのに、今日の淳之介さんはイライラしている。

「ねえ淳之介さん、どうしたの?今夜のことで、お父様から何を言われたの?」
よほどの事じゃなければ、ここまで不機嫌になるのはおかしいもの。

「身辺整理をしろってさ」
吐き捨てるように言って、唇をかむ淳之介さん。

やはりそう言うことか。
私みたいな女が側にいたんでは麗華との縁談に差しさわりがあるってことだ。