それから数分。
廊下から時々淳之介さんの声がする。

もちろん何を話しているのかはわからないけれど、もめているのはわかった。
この時間、このタイミングでかかってくるってことは、おそらく私に関連すること。

バタン。
少し乱暴にドアを開け戻って来た淳之介さんの顔が険しい。

ああ、やっぱり。
私はそう思っても、何も言わなかった。

はあー。
大きなため息をつき、私が横たわるベットに腰かけた淳之介さん。。

「ため息なんて、ごめんな」
「いいのよ」

きっと、淳之介さんは私以上にしがらみが多いだろうから、悩みだって多いはず。ため息くらいで楽になるなら、いくらでもどうぞ。

「彼女の親父さんから家に連絡があったらしい」
「そう」

麗華らしいな。
昔から自分の欲しい物の為ならなりふり構わないところがあるから。
嫌がらせは、きっと私が淳之介さんのマンションを出るまで続くだろう。ああ見えて結構しつこいし。

ブブブ ブブブ。
今度は私の携帯に着信。

「えっ」
意外な人物の名前が表示されていて、声が出てしまった。