「ここですか?」
「ああ」

淳之介さんに行き先をお任せして、到着したのはホテルのラウンジ。
確かお腹が空いたって言っていたはずなのに・・・

「ここは料理もうまいんだ。飲みながら食べよう」
「はあ」

「中野様、お待ちしておりました。どうぞ」
いつの間に予約していてくれたのか、店の入口には黒服を着た男性が待っていた。

そして、案内されたのは大きな窓に面した個室。

「ウワァー、すごい」
高層ビルからの景色なんて見慣れているはずなのに、声が出てしまった。

この景色を堪能するために、最低限ギリギリまで落とされた室内の照明。
それを補うために置かれたテーブルのキャンドルが炎を揺らしている。
とっても幻想的で、別世界のような空間。

「お食事をなさるようでしたらメニューをお持ちしましょうか?」
「いや、お勧めでいいからお願いします」
「はい。何かお好みなどあれば伺ってまいりますが?」
「そうだね、僕はシェフにおまかせでいいよ。彼女は、魚より肉が好きで、でも、チキンは好きじゃない。ビーフもポークも好きだけれど脂身が苦手だから」
「はい」
「でも、海老やイカは好きだな。野菜は全般的に大好き。甘いものも好きだから何かデザートもお願いします」
「かしこまりました」

すごいな、私の好みが把握されている。