【短編】純恋

放課後、あたしはあてもなく家のまわりをうろうろしていた。

ランドセルは重いし、いかにも小学生になってしまうので置いてきた。

愛用している自転車も使わずにぶらぶらと歩く事はあまりない。

特に気にして歩いていたわけではないけれど、いつの間にかタケの家の前についていた。

こんな所に居ても仕方ないと思い、近くの公園のベンチに座る。

そういえば本もマンガも持ってきてない。

「あ~?平塚じゃん。」

後ろから聞こえたこの声。

間違いなくタケだった。

ランドセルではなくリュックを持っているところを見ると、習い事かなにかの帰りらしい。

「あ~っ、何でこんなとこにいんの!」

「そりゃ俺のセリフだ!隣、俺ん家!」

言われて見ればその通りである。

あたしの家はもっと北の方にある。

タケは、さっさと家に帰ればいいのにまだベンチの横にいる。

何も話す事がなくなり、黙り込む2人。

「…な、誰かと待ち合わせでもしてんのかよ?」

「あ、うん。」

とっさに嘘をついてしまった。

あてもなく歩いてここに来てた…なんて言ったら、絶対にからかわれるから。

「へー。彼氏か?」

「ちっ、違うよ!女友達です~っ。あたし彼氏いないし!好きな人はいるけどぉ」

最後の言葉は不用だったと、あとで後悔する。

「ふーん。俺も好きなやついる…って、ヤベッ、もう塾行かないと遅れる!んじゃ!」

そういい残してあっという間に行ってしまった。

100m13秒だもんなぁ…あの速さは納得。

それより。

タケの好きな人って…誰?

98%の確立であたしじゃないと確信する。

その事は家で考えよう。

そろそろ夕日も出てきたので、あたしは帰ることにした。