21トリソミー

「それとも、独立でもして事業でも立ち上げる? 友樹専門学校でも設立する? 何を専門に教えるの? 女から弁当を貰う方法とか?」

「…………」

 鼻で嗤う奈子を、友樹が睨んだ。

「……俺たちは何も悪いことをしてない。松岡さんが作ってくれた弁当を俺が食べていただけ。なのに何で処罰を受けなきゃいけないんだよ」

 友樹が拳で自分の太腿を叩いた。

「処罰なんか何も受けてないじゃない。弁当女の契約打ち切りは学校都合だし、自主退職も弁当女都合。てか、【何も悪いことをしていない】? 既婚者と独身の弁当のやり取りを周りの人間が微笑ましく見るとでも思った? そんなわけないって分かってたから堂々と『松岡さんの手作りです』って言って食ってなかったんでしょ? 開き直るんじゃないわよ」

 苛立つ友樹の態度に更に苛ついた奈子が、ケーキに乱暴にフォークをぶち刺した。