21トリソミー

 奈子とリビングへ行くと、

「お疲れ」

 私服に着替えてソファに座っていた友樹がこちらを見て、奈子に挨拶をした。

「おう、お疲れ」

 玄関で私と話したときよりも、そっけなく返事を返す奈子。互いに嫌悪している空気を感じた。

「奈子がケーキ買って来てくれたんだけど、どれがいい?」

 変な空気に戸惑いながらも、ビニール袋の中からケーキを取出し、テーブルに並べた。

 奈子は私たちが好きなケーキを選べるようにと、3種類のケーキを買って来てくれていた。

「俺はいいよ。2人で食べて。食欲ないって言ったじゃん」

 友樹がケーキを遠ざけるように、右手の掌を私に向けた。

 ケーキは別腹かもと思ったが、そうではなかったらしい。