21トリソミー

「奈子‼ 待ってた‼」

 勢いよくドアを開けると、

「何その、遠距離恋愛中の彼氏を迎える様な情熱的な出迎えは」

 奈子は私の圧に押されて一歩後ずさった。

「友樹と2人きりが耐えられなくて……」

「イヤイヤイヤ、夫婦でしょうが」

 奈子は呆れた顔をしながら私の二の腕をポンポンと軽く叩き、「お邪魔するよー」と玄関に入った。靴を脱ごうとした奈子が、

「あ、手ぶらっていうのもアレだから、ケーキ買ってきたー。コンビニのだけど」

 コンビニのビニール袋に入ったケーキを「コンビニのケーキだってケーキ屋さんと引けを取らないくらいに美味いし、別にいいよね?」と私に押し付けるように手渡した。

 奈子なりに気を遣ってくれたのは分かるが、『アレって何だよ‼ ケーキなんかいらないから、一刻も早く来てよ‼』と自分勝手な私が心の中で静かに苛立っていた。