21トリソミー

「……松岡さんって人なんだね」

　今の私が松岡とやらに抱いている感情は、誤解ではなく憎悪や嫉妬だ。

　怒りで震えそうな手で、夕食を全部冷蔵庫に押し込むと、スマホを握りしめ奈子に電話を掛けた。

『はいはーい。出てこられそう？』

　こちらの空気を知るはずもない奈子の声の調子は、さっきと同じく軽かった。

「悪いんだけど、奈子がウチに来てくれない？　『３人で話したい』って友樹が言ってて……」

『えぇー。面倒くせー。巻き込むなよー』

　しかし、私の話を聞くや否や、奈子の声色はかったるさそのものになった。

「首突っ込んでおいて何言ってんの」

『分かったよー。行けばいいんでしょ』

　それでも奈子はウチに来てくれるらしい。

「他人のいざこざって面白いもんね」

『他人事だからね。今から家出るから、３０分くらいでそっちに行けると思う。じゃあ、また後で』

　３０分後、私は何を聞かされるのだろう。