21トリソミー

 何も分からないまま、自宅へ入り、今度こそキッチンへ向かう。

 エコバッグから買ったものを取出し、所定の位置へと片づける。それが終わると、いよいよ夕食の準備に取り掛かった。

 モヤモヤしながら野菜を切る。

 お弁当の女と私の手料理、どっちが美味しいんだろう。……負けられない。

 作り慣れた煮物の調理をやめ、スマホでおしゃれで美味しそうなレシピを検索。

 いつもは茶色多めの素朴な食卓だが、今日は彩豊かな食卓を目指す。

 慣れない料理をせっせと作り、ダイニングテーブルに並べていると、玄関のチャイムが鳴った。友樹が帰ってきた。

 足早に玄関に向かい、開錠してドアを開ける。

「おかえり、友樹。夕食、今出来たとこなんだ」

「ただいまー。腹減ったー」

 一歩家に入った途端にネクタイを緩める友樹。いつもと全く変わらない。浮気に後ろめたさなどないのだろうか。