「……奈子。久しぶり。元気だよ」

 仕事を辞めてから連絡すら取っていなかった奈子だった。

 今も無職な為、夫の負担を少しでも軽くしようと、食費や日用品はいつもネットで調べて安い店を探し、少しくらい遠くてもチャリを漕いで買いに行くようになっていた。それぐらいまでは、回復した。

 トイレットペーパーが特売になっていたスーパーが、元職場の近くだった為、偶然奈子に会ったのだ。

 奈子に会いたくなかったわけではないが、会うと気まずい。なぜなら、

「そっか。元気なら良かった。……仲直りしないままだったから、連絡も出来なくてさ。……心配してたんだ」

 奈子の言うように、私は奈子と和解しないまま仕事を辞めてしまったのだ。子どもを失ったばかりの私にそんな余裕はなかったし、落ち込む私に奈子も話し掛けられなかったのだと思う。