21トリソミー

 自分の記入欄を埋めた友樹が「はい」と離婚届を私の方に滑らせた。

「…………」

 さっきまで逆上していた血の気が、一気に引いていくのが分かる。ただの紙切れなのに、離婚届には人間の血流を操れるほどの力があることを今日知った。

 ボールペンを握ってみるが、腕が動かない。

「香澄?」

 奈子が、離婚届を見つめたまま書こうとしない私の顔を覗いた。

「……何でかな? もう無理なのは分かっていて、私は友樹を許せなくて、友樹も私とはもう一緒にいたくないって、ちゃんと理解してるのに、何で書けないんだろう? 赤ちゃんが心配だからかなぁ?」

 自分の気持ちが分からなくなって、奈子に自分の気持ちを聞くという、それこそ訳の分からないことをしてしまう。