21トリソミー

「遅くなってごめーん」 

 すぐに帰って来ると思いきや、弁護士さんが戻ってきたのは1時間後だった。

「どこ行ってたのさ」

 奈子が赤ちゃんの手を使って弁護士さんにパンチを繰り出す。

「ついでに区役所に行ってこれ貰ってきたー」

 弁護士さんが両手でバサッと広げたのは、離婚届だった。

「……あ」

 離婚届の実物を初めて目にして固まる。離婚届に手が伸びない。これを書いたら、友樹とは他人になってしまう。友樹とやり直すことは無理だろう。それは分かっている。分かっているのに、結婚当初の楽しかった記憶が頭の中を駆け巡り、躊躇を掻き立てる。しかし、

「判子、ここにないんで自宅に帰ってから押します」

 友樹は離婚届と離婚協議書離婚協議書に手を伸ばした。右手にボールペンを握り、「もう、さっさと終わらせたい」と呟きながらスラスラと記入する友樹。