21トリソミー

「イヤイヤイヤイヤ‼ ちゃんとお支払しますから‼ 宜しくお願いします‼」

 弁護士さんに向かって勢いよく頭を下げると、

「そぉ? じゃあ、その分慰謝料に水増しするかぁ」

 と、弁護士さんは友樹たちを前にして遠慮ない言葉を発した。奈子と弁護士さんは姉妹じゃくて従妹なのに、性格が激似だ。

 弁護士さんの発言に、友樹の目が泳ぐ。慰謝料を払わずに逃げ切ろうとしていた友樹の『こんなはずじゃなかった』という胸の内が、ハッキリクッキリと透けて見えた。

 友樹の気持ちなど当然お構いなしの弁護士さんは、「奈子から話と条件は大体聞いてるから。あ、これ公正証書にしましょうね。後ほど友樹さんにもご同行頂いて役場に行きましょうね」と、持参したパソコンでテキパキと離婚協議書を作り上げ、「プリンターお借りできますか?」と友樹に尋ねると、

「ウチにはありません」

 最後の抵抗なのか、友樹は嘘を吐いた。

「友樹の部屋にあるでしょ」

 だがしかし、私はこの家でプリンターを見たことがある。

「壊れた」

 往生際の悪い友樹。辟易する。