21トリソミー

 奈子が友樹の実家の住所を送信してから1時間後、ようやく弁護士さんが到着した。

 この1時間はまさに地獄だった。友樹はくだらない理由をつけて何度も逃げようとして、その度に奈子に「逃げたこと、学校で喋っちゃうけど。もちろん弁当女の学校でも」と脅されて阻止され、お義母さんは【弁護士】という言葉にビビったのか、先ほどとは打って変って私たちのご機嫌を伺うような気持ちの悪い太鼓持ちをしだすし、お義父さんは本物の膝を見失うほどの残像が残るような高速の貧乏ゆすりをし続けた。

 奈子だけがこの状況を楽しんでいて(まぁ、他人事だから、無関係の人には面白く見えるだろう)、「お腹が空きました。手土産開けません?」とお義母さんに言いだし、言われるがままお義母さんがお菓子の箱を開け「まぁ‼ 素敵な焼き菓子」と大げさなリアクションを取った姿に、奈子とふたりで冷笑した。