21トリソミー

　悶々としながら、掃除機をかけ、洗濯機を回し、いつも通りの家事をこなす。

　お昼になり、冷蔵庫の余り者で簡単な野菜炒めを作り、ワイドショーを見ながら食べていると、無造作にテーブルに置いていたスマホがブルブルと震えた。

　光る画面には奈子の文字が浮かんでる。

「もしもし」

　口の中の食べ物を強引にゴクリと飲み込んで電話に出た。

『友樹と弁当女、やっぱりまだ繋がってたわ』

　電話の向こう側の奈子の鼻息が受話器に当たって変な音がした。

「……不倫じゃないから切る必要がないと思ってるのかな」

『トンチかよ。なんだその腹立つ理論。弁当女、ウチの学校辞めた後、他の専門学校の事務員になりやがって、合同ガイダンスで友樹と再会しやがったみたい。しつこいわぁ。あの弁当不倫クソ女‼』

　ご立腹の奈子の中では、松岡さんのフルネームは【弁当・不倫・クソ女】というミドルネームまである外国人のような名前らしい。