水栄館の入り口に車を停めると、旦那さんが出迎えてくれる。

 「やあやあ永悟くん、ご苦労様。」

 旦那さんはいつまでも俺を子供扱いだ。助手席のドアを開けてやる。

 「いやぁ、別嬪さんですね。」

 君の荷物を下ろしてエントランスへ向かう。君は旦那さんと会話をしながらチェックインを済ませる。

 「永悟くん、夕飯一緒に行くんだろ?」

 「今夜、うち誰もいないんですよ。」

 「うちで一緒に食べてったら?予約キャンセル出てなぁ。」

 「そんな事出来ないよ。」

 君はちょっと考えて。

 「私はそれでも」

 「えっ!」

 しまった、思ったより大きな声が出てしまった。旦那さんが笑いを堪えながら言う。

 「荷物運んで支度しときますので、お二人で散歩でもしてきたら如何です?」

 「そうさせて頂きます。」

 君は俺を見つめて言った。