初めて君に出会ったのは、君が雨宿りに家の店先に立っていたから。急な雨に降られた君を、店の中に案内した。

 「あの、雨宿りするなら中へどうぞ。」

 振り向いた君は驚いて、微笑んで軽く頭を下げた。そして小さな声で言った。

 「ごめんなさい、すぐ行きます。」

 紅い唇から零れる言葉はとても素敵だと思った。君はとても美しくて、上品な女性だと思った。俺は自分に戸惑った。だって俺の心臓はドキドキして、止まらなかったから。

 「遠慮せず、どうぞ。」

 君を逃がしたくなくて、出た言葉。君は少し考えて言った。

 「和菓子とお茶、お店で頂けますか?」

 「はい。」

 君はハンカチで濡れた髪を押さえながら店に入ってきた。