確かに、そう言われたら渡さない理由はないかもしれない。
「考えてみる。確かに井上くんにあげて山本くんにあげないのも変だよね」
「そうだよ」
未知は安心したようにうなずいた。
「でも、何でそんなに山本くんに渡してほしいの?」
「んー、那奈は自分の気持ちに気付いてないだけだと思って」
「え?」
未知の言葉の意図がよく分からない。
「那奈、山本は多分、那奈のことが好きだよ」
「・・・え?」
一瞬、思考が停止した。
今の“好き”の意味は、つまり、そういうことだよね。
「那奈は?井上への好きと、山本への好きは同じ?」
未知の真っ直ぐな瞳が私を離さない。
湊への好きと、山本くんへの好き。
それは、明らかに違う。
多分、自分でも薄々気付いてたけど、気付かないふりをしてた。
「那奈、後悔しないようにね」
『急にごめんね。また明日』と、未知は手を振り音楽室を出ていった。


