「なー、10月に合唱コンクールあるって知ってた?」
机の上に荷物を置くと同時に、智哉が言った。
「合唱コンクール?あのNHKの?」
一花が去年までコーラス部で、夏になると“Nコン”に出てたから聞いたことある。
「んな訳あるか。なんか、クラス対抗だって。で、学年代表になったら文化祭で歌うんだってよ」
智哉は『昨日先輩から聞いた』と付け加えた。
合唱コンクール、か。
楽しそうじゃん。
クラス一丸となって頑張れば、盛り上がるし。
「じゃあ、俺絶対指揮者に立候補するわ」
右手の親指と人差し指を立て、顎の下に当ててキメた。
智哉と、一緒に話してた男子数人は『うぇーい!』と盛り上がってる。
髙橋はこういうノリ、苦手だろうな。
盛り上がってる男子たちに気付かれないようにそっと髙橋の方を見ると、瀬尾、木村、近本に囲まれて穏やかに笑って話していた。


