私が優依の男っぽさを初めて見たのは、ある夏の日。



石垣島でのこと。



優依は、前回の焼肉屋で会った人とは違う彼女と派遣の仕事のため、石垣島に来ていた。



どうやら前の彼女とは、別れたらしい。




旅行好きの私は、そっこーで会いに来た。



もちろん、その時付き合っていた彼氏を連れて。




優依は、居酒屋で働いていた。




席に案内されると、男性の従業員に「マツシマユイいますか?」と尋ねた。



マツシマ、、、



優依が塾にいた頃の名字だ。




そのあとすぐ

『あ!離婚したから名字変わってるかも、、』

と思い、



「ユイです!タカハシユイ!」


と、言い直した。





「大丈夫ですよ。お待ちくださいね。」



と、男性の従業員は笑顔を見せて答えた。












しばらくして、優依が現れた。






「久しぶり!来たよ!」



「久しぶりー!ありがとう!」




あんまり気にしてなかったけど、いつからか優依は、ホルモン注射をしていて声が少し低くなっていた。









「仕事何時まで?待っとくよ。」




と言った私に、



優依は



「今日なー、まじ最悪。彼女とケンカしてんねん。あー、ほんま意味わからん。」




と、イライラした様子で答えた。









『ん?( -_・)』







と思ったが、ふつうに



「仕事何時終わる?」


「帰り会えそう?」



と、聞き直した。









優依は、



「10時には終わる!もう、、、わけわからん!」



と答え、まだ不機嫌そうな顔をしていた。



そして、


「ごめん、もう戻るな。またあとで!」


と言って、その場から去っていった。






どうやら優依の彼女も、この店で働いているようだった。







一人、怒っているような泣いているような顔をした女の子が私の顔を見に来たから、『あ、この子だな。』ってすぐにわかった。









優依の仕事終わり







その日は今までの優依との日々で、おそらく一番忘れられない日になったと思う。





先に居酒屋の外で待っていると、店の裏口からケンカしながら出てくる優依とさっきの彼女がいた。





優依が先を歩き、彼女がそのあとを追う。




歩きながらも、2人は何か言い合っていた。




私(と当時の彼氏)は、どうしていいかわからずとりあえず2人のあとを追った。