昼は部屋にひきこもって、他人と触れ合うことのない生活をした。

 カーテンは閉めたままで、薄暗い部屋にいた。

 あたしは特に趣味もないので、やることがないから勉強した。
 夜は、親が寝静まるとすぐに窓から外に出て、夢遊病者のように歩き回った。

 起きて、勉強して、散歩して、寝る。

 次の日に備えて早く寝る必要がないこと意外は、単調な生活だった。
 登校拒否をしても、こんなつまらない生活しかできない自分にうんざりした。

 他の誰かにはできないことがしたい。

 皆のようになろうと、必死に標準を目指すのではなく、そういう何かを超越した何かになりたいと思った。

 幸せな家庭を築くより、特別な存在になれるほうが幸せだと思った。


 あたしはだらだらと登校拒否生活を続け、いつの間にか季節は冬になっていた。

 暑いのは嫌いなので、涼しくなるのは大歓迎だ。むしろ年中寒い位がちょうど良い。

 ある日、寒さで目が覚めると、閉めているはずのカーテンが少し開いていた。
 閉めようと窓に近づくと、窓の外が白くなっている事に気が付いた。

「雪だ…。」
 ひとり言なんて自分は相当きてるな、と思った。
 時計を見ると、まだ四時半だったが、マフラーを巻いて散歩に出掛けた。

 誰の足跡も付いてない純白の雪の上を、ぎゅっぎゅっと雪を踏みしめる感覚を楽しんだ。