あたしは幼いころから日陰が好きだった。

 あたしは生まれつき体の色素が薄いらしく、明るいところにいると、自分が人と違っていることを思い知らされた。

 青白いあたしの肌には、闇がお似合いだ。
 それに空気がひんやりしていて気持ちがいい。
 元々人より暑がりのあたしはいつも日陰にいた。

 そんなあたしをみんなは雪女と呼んだ。
 でもそれは、親が美雪なんて安易な名前をつけたせいでもあると思う。
 
 肌が白いから美雪だなんて、どこかの童話じゃないんだから。


 あたしは小さい頃からそうやってからかわれ続けたが、高校に入学する頃にはだんだん慣れてきた。
 高校一年生の夏。あたしにはまだ友達と呼べるような存在がいなかった。
 同じ中学の子が、あたしが雪女だと噂を広めたからだ。
 
 所詮学校なんてこんなものだ。
 何かと理由をつけて、誰かを除外したがる。
 そうやって悪口を言いながら団結を深めていく。

 あたしはそんな薄っぺらい絆には興味が無かったから、寂しくは無かった。
 そして時々彼らを哀れに思った。どうせ一人じゃ何も出来ない、いつ除外される側になるかわからない彼らを。

 きっと皆もあたしを哀れに思っていただろう。社会に適合できない人間として。

 人を見下すことでしか自己を保てない人間なんていくらでもいる。
 だが、きっとあたしもそういう人間だ、と思うことがある。
 あたしはそんな考えが頭から離れないときは、自分が中心だ、自分が一番まともだと思い込むようにしている。でないと、いつか気がふれてしまう。


 極論かもしれないが、あたしはそう信じて生きてきた。