「変かな?」
「ううん! かわいい! 千世に似合うね。なんて色なの?」
「ありがと〜! ローズブラウンだよ」

 日差しが当たって髪の輪郭がほんのりと赤く見える。髪色が変わるだけで千世の雰囲気もぐっと変化した。

 千世は高身長で運動神経も良く、中学では陸上部のエースで活発な印象だった。けれど今は、長い手脚はモデルのようで、同学年の女子たちよりも大人びているように感じる。


「いいなぁー。私もいつか染めてみたい」
「菜奈も染めてみたら? こないだチョコレートブラウンいいなって言ってたよね」
「えー……でも美容室でカラーしてもらうの緊張するからなぁ」

 新しいことに挑戦するのは怖い。見た目を変えたら、周りにどう思われるか、変に浮かないか。そんなことばかり気にして、できない理由を探してしまう。

「それに私に似合わなさそうじゃない?」

 誤魔化すように笑顔を貼りつけて、今日も自己嫌悪に陥る。〝私に似合わない〟なんて自分で落ち込むようなことを口にして、変わりたいくせに変われない。

「そんなことないと思うけど。菜奈、メイクとかしてみたら? 結構印象変わりそう!」
「いやいやいや! 私そういうの全然わからないし、怖くって」
「怖い? なんで?」
「まつ毛上にあげるやつ妹にやってもらったことあるけど、瞼挟まれて涙出たもん!」

 そのときのことを再現するように話すと、千世がおかしそうに声を上げて笑う。

「ふたりとも、おはよ」

 黒髪ボブの小柄な女の子——香乃が遅れてやってきた。香乃は千世を視界に映すと、くりっとした目をさらに大きく見開いて、立ち止まる。