「ひーめ!」

さくらに肩を叩かれてハッとする。


「あ、さくら…おはよう」

「姫もいい加減素直になれば?」

「え?」

「細かいことは知らないけどさ。スッキリしちゃえば?美鈴みたいに。」

「…」


美鈴に目くばせすると、クマはひどいけど確かに憑き物がとれたみたいに晴れやかな顔をしている。


「どうするかは姫の自由だけど。素直になんないと後悔すると思うよ~?キヤ君まぁまぁモテるんだからさ!」

「…」


相手がキヤだと確信をもって笑うさくらに、もう否定する気も失せて、「アドバイスどーも」と言って私は体育館の中へと入った。



身支度をしながら改めてキヤについて考える。



素直になるって…

キヤに好きだって言うの?

…えっ、無理

てか素直になったところで、気まずくなって関係が悪化するだけじゃん。

絶対に嫌。

今、幼馴染としてキヤのそばにいられるんだから。

これ以上の幸せはない。



うん。

やっぱり私は、ボールが恋人でいい。