一通り仕事が終わり、時計に目をやると時刻は20時を回っていた。
「沙奈?」
スマートフォンの機内モードを解除すると、沙奈から1件の着信が入っていた。
嬉しさと喜びを何とかこらえ、ずっと声を聞きたかった沙奈へ電話をかけ直した。
身体がだるいと言っていたから、もしかしたら寝ているかもしれないな…
「大翔先生?」
電話に出て早々、沙奈の声を聞いてうるさいほどに心臓の鼓動が加速していくことが分かる。
あまりにも可愛い沙奈の声に、今日一日の疲れが吹き飛んだ。
「沙奈、体調はどう?
電話かけてて辛くない?」
「うん。大丈夫。
ごめんね、ちょっと声が掠れてて聞きにくいかもしれないけど…」
「大丈夫だよ。沙奈の声、仕事中ずっと聞きたかったんだ。」
「ありがとう。大翔先生…」
「どうした?」
「今日、お家に来る?」
あまりにも切ない声で発したその一言に、胸が締め付けられる。
「沙奈…。今、仕事終わったからすぐに向かう。
沙奈の家に着くまで、電話繋げていようか。」
「車の運転大丈夫?
捕まったりしない?」
「大丈夫。スピーカーにしておくから。」
思い違いでもいい。
俺を求めてくれていることが、何よりも素直に嬉しい。
「沙奈、夜ご飯はもう食べた?」
「まだ食べてない…。」
「そうか。食欲はどう?」
「…あまりないかな…。」
「そっか…。」
きっとこの声の調子は、これ以上聞いてほしくない声だよな…
今日1日、紫苑が傍にいてくれたみたいだから何かしら口にしてくれているとは思うけど。
それから、車を走らせ15分。
沙奈の家へ着いた。
「大翔先輩!お疲れ様です。」
「翔太。お疲れ様。」
研修終わりの翔太が、車から降り俺に声を掛けた。
「中へ入ってください。」
「ありがとう。お邪魔します。」
翔太の後を追い、家へ上がらせてもらった。


