なないろの輝きを探して

「え…」

驚いたような表情をした。
でもそれはすぐに戻り、

「そんな怖がらなくてもいいのに〜」

と言った。
それが逆に怖く感じさせる。
人を見るのは何年ぶりだろうか。

今までで2番目くらいの恐怖を感じた。

「名前は?」

知らない人に教えるわけない。
そう言おうとしたが思うように口が動かない。

「まあ、知ってるからいいや」

「え…?」

知ってるってどういうこと?
この人に見覚えもないし名前を教えた記憶はない。
ましてや話した記憶すらない。

如月 伊織(きさらぎ いおり)ちゃん」

え…?本当になんで知ってるの?
話したことが実はあったのかもしれない。

でもここ最近家から出てない。
それなら会ったとしたらだいぶ前。

それなら記憶にないのも…

「そんなに考え込まなくていいよ」

「いずれ分かるから」

いずれ分かる?
どういうこと?

私の記憶には一切ないし…
この人がいずれ教えてくれるとか?

「あら、また考え込んじゃった」

笑いながらそういった。

「…あれ?伊織ちゃんオッドアイだったっけ?」

オッドアイ?
私はもともと両目共一緒だったはず…

「そんなことは…」

「やっと喋ってくれた」

優しく微笑みながら言った。
この人は優しいのかもしれない。

この人なら─

「じゃなくて、元からオッドアイじゃないよね…」