「こら、シオン。ちゃんと挨拶くらいできるだろう。」
彼は困ったように眉を下げ、シオンさんを注意した。
ライは妹の彼女をとても可愛がっていたのをなんとなく覚えている。
そういえば彼と私は3つ年が違った。
そして私と彼女は同い年だったはずだ。
彼女の年を覚えてしまうほどに、彼はよくシオンさんの話をしていたから。
本当に仲のいい兄妹だった。
彼に注意された彼女はとても悲しそうに、益々下を向いて。
「私はいいから、怒らないで。ね?」
彼女を庇うようにそう言った私。
そんな私をライはやはり困ったように笑った。
彼女は、私がライのそばに居ることをよく思っていなかったんだ。
その感情が理解できないわけじゃなかった。
ずっと一緒にいた兄に彼女が出来て、当然のように隣に居座っていたらいい気分にはならないだろう。
彼女はライを慕っていたし、彼らの家は母子家庭だったから尚更だ。
だから私たちは目を合わせることはおろか、言葉を交わしたことも数えられる程度で。
はっきりと彼女の顔を見たのも、時の狭間が初めてだった。

