「どこか行くの?」


ゆっくりとした足取りで彼女は立ちあがった。
それにつられて腰を上げると彼女は手を伸ばし、私を制した。


「ユウのところに行ってくるわ。」


たったそれだけ。
けれど彼女の言いたいことは分かった。


「…待ってるね。」


彼女もユウくんと話したいことがあるのだろう。
ひとりで行くと、そういうことなのだとわかる。

私がそう言うと彼女は満足そうに頷いて目を細めて笑った。


「フフ、じゃあね。」


背を向けるとシオンさんはゆっくりと足を進めて。

やがて白に溶けて消えるまで、私はその背中を見送ったのだった。