「ルール?」


それはシオンさんが言っていたあれのことだろうか。
確か彼女は、
「自分の生い立ちを話してはいけない。」
と言っていた。

首を傾げる私に小さな彼は首を振った。


「ルールは他にもあるんだよ。」


小さな手で私の手を引いたユウくんは、私をベットまで連れて行き座らせる。
やっぱり、彼は年のわりに大人だ。
私に気を遣ってくれたのだろう。


「他にもルールはあるけど、僕が破ったルールは2つかな。」


そう言うけれど、彼は破ったことに対して特に何も思っていないように思えた。


「ひとつ。すべてを思いだしたらすぐに去ること。」
「それって!ユウくんはもう…?」


すべてを思い出してる、ってこと?
なのにまだここに居るの?


「あともうひとつは、」


小さな手が、ぎゅうっと私の手を握った。


「他の人への協力及び、助言をしてはならない。」


『ライ、だよ。』
やはり夢の中で私に彼の名前を教えてくれたのはユウくんだったんだ。


「ライ、だよね。」
「よかった。覚えてて。」


夢で片づけられてたらどうしようって思ったよ。
そう言ってユウくんは笑った。

時の狭間には分からないことばかりだから、彼がどうやって夢に現れたのかは検索しないことにする。
どうせ納得出来る答えは返ってこないだろう。
この空間や死んだはずの私たちがこうやって存在することも答えなどないのだろうし。

しかし、そこで気になるのはルールが何のためにあるのか、だ。
必要のないルールと言うことは無いはずだ。


「破ってしまったら、どうなるの?」