「そういえば先客が…、あれ?」
漆黒のあの影。
さっきまでは確かに居たのに。
今この空間には私と小さな彼が居るのみ。
どうしてあんなものを見間違えるというのか。
しかし、今ここには2人しか居ないのが事実で。
「さっきまで誰か居たよね?」
するとユウくんはきょとんとして、あの影に向けていた表情を私に向けた。
「やっぱり見えてたんだ。」
あはは、と空笑いをする彼は年よりもはるかに大人びて見える。
実際に彼くらいの年の子供はもっと感情的でやんちゃなイメージがあるけれど。
彼はもう感情をコントロールしているように思えた。
「さっきの黒い人は、ここのマネージャーみたいなものなんだよ。」
時の狭間を管理する者。
それが漆黒の影の正体らしい。
「でもなんでユウくんの所へ?」
その問いに彼はまた困ったように笑った。
「僕がルールを破ったから。」

