ふわり、ふわり。
身体が無くなるような感覚。
現実味の無い、真っ白い所。

時の狭間なの?

いや、多分違う。
時の狭間とは違ってここに床は無い。
浮いている、のだろうか。

ここは何処だろう。


『……る。』


誰の声?


『…ゆる。』


嗚呼、この声は夢の彼。


『…くゆる。』


私を呼んでいるの?

悲しみの混ざった声音。
それは、私があなたを忘れているから?


「ごめんなさい…。」


思い出さなくちゃ。
ユウくんの事も、あなたの事も。

まずは名前。


「名前、なんて言うのかな。」


きっと、お互いの名前を呼び合ったりしたんだろうな。
私、幸せだったのかな。


「ライ、だよ。」


あどけない声。
後ろから聞こえたそれに不思議と驚きはしなかった。

振り返れば笑顔のユウくん。


「ライ?それが彼の名前?」
「うん。もう忘れちゃダメだよ?」


くすくすと悪戯っ子のように笑って、ユウくんは私に背を向けた。


「でも、僕が教えてあげられるのはそれだけ。」
「ユウくん?」


ぐっと強い力で体が後ろへと引っ張られるような感覚。
それと同時にユウくんがぼんやりと霞んでいく。


「あとは自分で思い出してね。」


その言葉を最後に、私の意識は深く沈んでいった。