ユウくんの所から、帰る途中。
彼女は一言も喋らなかった。

行きだってそうだったのに、何故だか沈黙が痛く思える。
彼女の表情をうかがい知れないことも、そう思う原因かもしれないけれど。

私の手を引く彼女の背中は、何を考えているのか。


「あの、シオンさん。」


静かなここに、声が響く。
彼女はゆっくり足を止めると首だけで振り返り、私を見た。

表情は、いつもの笑顔。


「何かしら。」


少なからず安心を覚えたその笑顔に、空気が軽くなった気がした。


「ユウくんとシオンさんって知り合いなの?」


沈黙に堪えられなくて切り出した質問だったけれど、この際だ。
気になったことを聞いてみた。

彼女のユウくんに対する態度や、ユウくんが言っていたあの言葉。
知り合いで無いのならば、説明がつくような気もするのだけれど。

しかしシオンさんの返事は違った。


「当たり前でしょう。時の狭間は生前の知り合いとしか繋がっていないのよ。」


少し呆れた風にため息をついて、彼女はまた足を進め出す。


「生前の知り合い…。」


ではシオンさんとユウくんはお互いを知っているはずだ。
それなのに、何故?

『"シオン"って誰のこと?』

彼女の答えは私の中の疑問を更に大きくしたのだった。