自分の影を追うように歩く。
夏特有の生温い風が全身にまとわりつく。
満月の日にしか出来ないこの遊びは
僕を未知へと連れて行ってくれる。
鼻先から垂れた汗が影をより色濃くする。

旅の行きつく先はいつも決まった歓楽街だった。
ぼんやりとした色とりどりのネオンが
煌々と照らすそこは人の影すら映さなかった。
ふと空を見上げてみても満月さえ見えない。
ポッカリと暗い空が口を開けているだけだった。
華々しいのは明かりだけでなく、
人々もまた同じだった。
綺麗に着飾り出すとこは出している。
まるでスポットライトに当てられたかのように
輝いて歩いている。
そしてその黒い目は辺りの華々しさに誘われた
華々しく魅せられている人々を追っている。

僕はいつもここを通り過ぎる。
今度はその先にある影を追って、
まっすぐ通り過ぎる。
あんなに華々しかった人々も、
僕と共に影に消えてゆく。

また生温い風が僕を包み込んだ。