★崩動★
琉羽の出張は1週間前後と聞いていた。
駅で別れてから3日後、雨哥のスマホが鳴った。着信だ。

画面にはまっているようで待ってなどいない名前が表示されている。
ふぅっと大きく息を吐き、「もしもし」と出た。声だけは冷静に。
「もしもし、今、平気?」と苺美が明るい声で聞く。
いつも嫌ですけど、と心で言いつつ「いいよ」と答える。その方が平和に終わるから。
「ねぇ、チョコってミルク?ホワイト?」どうでも良い…。
変な質問に「ホワイト」と素直に答える。
前にも「ホワイト」と答えたのを覚えていない事に、雨哥は何度目かのため息をつく。
「プチ旅行?」と雨哥は聞く。
苺美はいつもちょっとした旅行や遠出をした時、お土産にとチョコを買って来る。
特にご当地でもないチョコを。
「そうなの!帰ったら届けに行くね」
そう言う苺美の声と重なって聞こえて来た音声に、雨哥の胸に何かが刺さった。