咄嗟だった。声を掛け、タキの肩に手を添えてしまった。
普通に。ただ心配をしただけ。
それが良かったのか、タキは立ち止まり、雨哥を見た。
普通に目が合った。
あの日とは違う目で雨哥を見ている。
本当に普通の人の目。

「ケガ…してるんですか?」
指の間から、血が見えている。
誰が見ても分かる。
「病院へ行くんですか?」と聞くとタキは首を横に振り「薬局」とだけ言った。
雨哥は止めた。
そんな雨哥にタキは小さく「慣れてるから。よくあるから」と言う。
でも、その震えはよくある事ではない。
「私もたまに切るんです。私で良ければ手当てしますよ。薬もありますから」
雨哥が優しく微笑む。

あまりにも自然な雨哥の態度にタキは頷いた。
頼ってしまった。
あまりにも自然で…。
タキにとって雨哥は珍しく信用してしまったのだ。
あまりにも普通で。